終戦直後から活躍し、90歳を迎える今も第一線で精力的に活動を続ける写真家・田沼武能(1929ー)。
田沼は1949年に東京写真工業専門学校(現・東京工芸大学)を卒業後、名取洋之助主宰のサン・ニュース・フォトス社に入り、木村伊兵衛の助手として写真修業をスタートしました。『藝術新潮』の嘱託写真家として昭和を代表する文化人の肖像写真連載で注目を集めたのち、アメリカのタイム・ライフ社と契約、世界中を取材撮影しフォト・ジャーナリズムの分野でも頭角を現します。1984年からは黒柳徹子ユニセフ親善大使の援助国訪問に毎回同行するほか、これまで120カ国以上で子どもの写真を撮り続けるなど、幅広い分野で活躍しています。
そんな田沼が文化人肖像や世界の子どもとともにライフワークとしているのが、下町を中心とした「戦後東京」の写真です。浅草の写真館に生まれた田沼は、東京大空襲で生家を焼き出され逃げ惑う体験をしました。その時の鮮烈な記憶が自身の写真家としての原点になっているといいます。本展では、終戦直後の廃墟から出発し、さまざまな矛盾を内包しながらも再生を目指し激しく変貌した東京の、オリンピックに至るまでの諸相をとらえた写真を「子ども」「下町」「街の変貌」の3つの視点から紹介します。