タイトル等
ignore your perspective 43「海上の道 セッション1」
荒渡 巌 / 緒方ふみ / 杉本圭助 / 渡邊慎二郎
会場
児玉画廊 | 天王洲
会期
2018-08-25~2018-09-22
休催日
日・月・祝休廊
開催時間
11時~18時
11時-18時(火~木, 土) / 11時-20時 (金)
概要
拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
児玉画廊|天王洲では8月25日(土)より9月22日(土)まで、ignore your perspective 43「海上の道 セッション1」を下記の通り開催する運びとなりました。荒渡巌(初紹介)、緒方ふみ、杉本圭助、渡邊慎二郎(初紹介)の4名の作家を取り上げます。
名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ。島崎藤村の詩による唱歌として知られる「椰子の実」の歌い出しにあるように、四方を海に囲まれたこの国には浜辺に寄せる波と共に多くの漂着物が海の彼方から運ばれてきます。そうした漂着物を思考の起点に日本人の来し方行く末に思いを馳せる柳田国男の最晩年の著書「海上の道」には、島崎の「椰子の実」の原案が柳田の体験に基づくものだ、と書かれています。伝承を集め、土地へ赴き、国の文化と生活の歴史を内側から体験的に紐解いていく学問である民俗学。その始祖である柳田の遺言的著作「海上の道」は、若い時分に見た打ち上げられた椰子の実に思考の端を発し、風、宝貝、ネズミ、稲作まで、緩やかな連続性を持った試論を重ねていく良書です。海の果て、波の向こう、古今東西それは見知らぬ「何か」の比喩であります。しからば、浜辺に打ち寄せられる数多のもの、柳田の表現を借りれば「寄物(ヨリモノ)」は、その得体の知れない「何か」へと接続できるものと言えます。故に、珍奇な拾得物としてだけでなく、信仰の対象ともなり、恐れや願いを託すものにもなるのでしょう。生活や文化、思考も宗教も、生き死にさえもが去来するその瀬戸際としての浜辺。ありとあらゆるものをその身に付着させながら、「何か」が流れ着く場所としての浜辺。美術に取ってもこの上もない思索の舞台となり得るのでは無いでしょうか。
荒渡 巌
漂流物や廃材を収集し、インスタレーションを制作しています。廃品のモニター、PC、映像機器、現代社会の文化的な生活には欠かせない情報ツールであっても、一度ネットワークと電源網から断ち切られれば自ずとその「切り離された」が故のオブジェクティブな側面が立ち上がってきます。デジタルネイティブ世代からのよりプリミティブな思考でのモノへの回帰かもしれません。今回の展示では漂着物のガラスの破片が車輪の骨に挟み込まれたものをフィルムのように扱った映像インスタレーションです。照射された光を透かして拡大投影される磨耗したガラスの表情は琥珀のように内包する漂流の記憶を暗示します。

緒方ふみ
絵画的なもの、絵画を制作すること、それは緒方にとっては日常的な行いと等しいレベルに密接で必要不可欠であるべきで、だからこそ、身構えた意図的な「制作」とは異なる態度で臨むべきものです。児玉画廊での個展「プレイルームと飯事」では、展覧会場を一つの仮想生活空間のように位置づけて、作品制作や作品展示を「飯事」である、つまり、一時的なシミュレーションとして認識することで、「展覧会」としての特殊性を軽減し、普段の彼女のとりとめも無いアトリエでの様子をなぞるようにして構成されました。「飯事」は最後は「お片づけ」によって何事もなくなるように、緒方の制作行為とは、絵画的な構成要素を持ち寄り、組み合わせ、そして必ず最後には解かれて、常に流転するのです。

杉本圭助
「人間」をテーマとして制作している、と作家が常々明言しているように、杉本の作品はある種の「人間」のモデルとして構成されていることが多々あります。近年注力している白いアクリル絵具のペインティングシリーズもまた、その端正な表面の内部には想像以上の「何か」が潜んでいます。杉本が大学では建築を学んでいたことにも由来するかもしれませんが、絵画やその他作品の物理的な構成においてもコンセプトにおいても複層構造を利用したり内部空間、裏側、というような表層だけではなく空間・次元の問題意識を捉えています。真っ白に塗り潰された画面に隠されて見えない向こう側を、わずかな裂け目から垣間見せることで「何か」を無限に想像させるのです。

渡邊慎二郎
照明、植物、既存品などを使い、平たく言えばレディ・メイドに類する作品を制作しています。また、絵画作品においては、描いたモチーフがキャンバスの裏側へ滲み出たものを図像と認識するもの、絵具が染み込み聖骸布のように写し取るものとしてのイメージの在り方などにフォーカスし、絵画面を一面的にではなく両義性のメタファーとするような作品を制作しています。近年のレディ・メイド的なインスタレーションでもその観点を継続し、植物の光屈性を利用して育成によってバランスを崩し自壊する(可能性を孕んだ)インスタレーションや、身体性を意識的に空間へと転化してさせいくインスタレーションなど、モノの在り方に対してオブジェクトとしてだけでなく、メタフィジカルな側面をも重ね合わせて提示しているように思えます。

ignore your perspectiveとしての今回の趣旨は、柳田の随想から思考方法のヒントを得て、単にグループショーとして作家、作品を寄せ合うというだけでなく、彼ら・作品らが「椰子の実」のように遠く思考の海の果てから我々の見知らぬ「何か」を連れてくるもの、という観点からそれぞれの作家の作品やコンセプトを読み直そうという試みです。そして、展覧会がその邂逅の境界線としての波打ち際となればと思います。また、今回を一波としてこの作品と思考の寄せ合わせ(セッション)が、二波、三波と継続されていくことを目指します。つきましては本状をご覧の上展覧会をご高覧賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

敬具
2018年7月
児玉画廊 小林 健
イベント情報
オープニング: 8月25日(土)午後6時より
ホームページ
http://www.kodamagallery.com/iyp43/index.html
会場住所
〒140-0002
東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
ホームページ
http://www.kodamagallery.com/index.html
東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
Webcat plus 展覧会タイトル等から関連資料を連想検索