鹿児島市に生まれ幼少期を過ごした宮之原謙(1898~1977年)は、現代的な感覚を反映させた清新な作風で日本の陶芸界に足跡を残しました。生誕120年の節目に、当館所蔵作品から変遷をたどり、多様な表現技法、個性豊かな図案に彩られたその魅力を見つめます。
宮之原は早稲田大学建築学科を病のため中退した後、近代陶芸の巨匠 二代宮川香山に師事し陶芸の道へ進みました。1927年には板谷波山らを顧問とする「東陶会」の結成に参加、作家としての創作活動や芸術性の追求といった近代陶芸の姿勢を継承しました。
宮之原の作品は多様な表現技法、個性豊かな図案に彩られています。戦前は彫文(ちょうもん)や象嵌(ぞうがん)などの精巧な技術を駆使した構築的な作陶を行っていましたが、戦後は「彩盛磁(さいもりじ)」と呼ばれる優美な色彩と艶(つや)消しの釉薬による柔らかな表現を生み出し、新境地を開きました。作品にはアール・デコのスタイルに影響を受けた幾何学的な意匠、自然界の花や鳥、そして建築物や宇宙、スポーツなど独特のモチーフも登場します。
器形、表現技法、図案が一体となって織りなす陶芸の世界をお楽しみください。