今日、絵本は人々に幅広く愛され、様々な物語が世代を超えて読み継がれています。中でも、話のあらすじに沿った挿絵は読者の想像力を高めるとともに、豊かな色彩や特徴ある表現を伴って、ストーリーに温かさや力強さを与えています。昨今、絵本は子どもが楽しむばかりでなく、大人にもその魅力を存分に伝えており、お気に入りの絵本を手元に置いて楽しむ人も多くいるようです。
こうした絵本の原画が、専門の絵本作家だけでなく、日本画制作を主とする画家たちによっても手掛けられていることは、あまり知られていません。輝かしい実績を重ねている日本画家の中にも、実は絵本原画を描いていたという者も少なくありません。そこで今回、日本画家による絵本の仕事にスポットを当てて紹介します。
本展ではまず、絵本原画を一つの作品として鑑賞いただき、そこに見られる日本画の要素や技法、また、絵本としての特性を踏まえた独特の表現などをご覧いただきます。同時に、出品の画家による本制作の日本画作品を併せて展示し、両作品に通底する創意や、または、本制作の時とは異なる表現を比較しながら鑑賞する機会ともいたします。加えて、日本画家たちの描いた絵本挿絵が紡ぐ、物語とのハーモニーを味わっていただけましたら幸いです。
本展では、絵本原画とともに、本制作作品(本画)も併せて展示します。
各画家が日本画制作で取り組んでいる表現と、絵本の挿絵として描いた作品とを、比較しながらご鑑賞ください。