浮世絵において、江戸の名所など風景を描くことは古くから行われていましたが、江戸時代後期になると風景画の重要度は次第に高まり、文化・文政期(1804~30)の準備期間を経て、天保期(1830~44)には美人画と役者絵に次ぐ第三の画題に浮上します。そのことに最も功績のあった浮世絵師は、葛飾北斎と歌川広重であり、二人の代表作である「富嶽三十六景」と保永堂版「東海道五拾三次」が、風景画を完成させた象徴的作品であります。しかし、北斎・広重以外にも同時期に多くの浮世絵師が、趣向をこらした風景画を版行、風景画核心競争の観を呈し、一大ブームを巻き起こしました。
本展では、その天保前期の風景画を中心に、前後の時代の作品も含め、浮世絵風景画の黄金期の代表作を、五部構成でご覧いただくものです。質量とも世界一級のホノルル美術館のコレクションでなくては望むべくもない豊かな内容の展覧会となりました。