書を芸術として愛してきたわが国の伝統は、中国を模範として学んだ後、独自の世界観を育みました。各時代の知識人たちは「書く」ことに親しむ中で、書き方のルールを定めています。一方では、筆墨を使いこなす巧みさや字の姿の個性を競うこともありました。こうした伝統的な慣習は今なお変わらず、多様な美を認め、書の流儀を派生させ続けています。古来、書とはいかに受け継がれてきたのでしょうか。また各々の書き手の理想はどのように追求されてきたのでしょうか。素朴な疑問から鑑賞のポイントや流儀の特質にいたるまで、分かりやすい解説と共に約80件の優品をご紹介いたします。
古筆では、高野切をはじめ、継色紙、寸松庵色紙など名筆のほか石山切を特集。また今年は後陽成天皇没後400年にあたり、桃山の華麗な作品を充実させました。江戸時代の文人たちの書も、手本とした中国の書法と比較しながらお楽しみください。