東京都現代美術館は、国内外のさまざまな現代美術の展覧会を開催し、4000点余の作品を所蔵する日本有数の美術館です。同館のコレクションには、現代の美術以外にも、戦前戦後の日本美術を代表する作品も多数含まれています。本展では、東京都現代美術館の所蔵作品のうち、近代から現代に至る日本画の名品を紹介いたします。
明治大正期から戦前の日本画壇には、岡倉天心が主導して1898(明治31)年に結成された日本美術院(院展)と、1907(明治40)年に開設された文部省美術展覧会(文展)のふたつの大きな団体がありました。明治・大正期の作品の中から、院展を代表する横山大観、文展出品作家では橋本関雪などの作品を展示します。
文展は美術の国民的な普及に役割を果たしましたが、作品審査をめぐる問題など組織的な矛盾をかかえていました。大正・昭和初期になると、これに対抗する形で新しい表現を模索する画家たちが出てきました。
たとえば、京都においては、1918(大正7)年に、文展の審査に対する不満から国画創作協会が結成され、土田麦僊・村上華岳・小野竹喬・岡本神草らがこれに参加しました。また、東京では、1928(昭和7)年に院展を脱退した川端龍子が「健剛なる芸術」を唱えて青龍社をつくり、その中から落合朗風・横山操ら異色の作家が生まれました。また、第二次世界大戦が終わると、パンリアルや創造美術など、従来の伝統的な表現によらない革新的な日本画をめざす運動があらわれました。
近代の日本画は、長い伝統を背負っているために、外来の美術と比較されるとともに、硬直的な画壇組織の矛盾も抱えていました。その中で、画家たちは常に革新的な表現を模索してきました。本展では、東京都現代美術館のコレクションを通じて、そうした日本画表現の革新と創造の一端をご覧いただきます。ふだん目に触れる機会の少ない、同館の近代日本画コレクションをお楽しみいただければ幸いです。