世田谷美術館は1986年に開館しました。開館30周年を記念する本展は、収蔵品を美術と生活をめぐる視点からご紹介します。
起点となるのは開館当初より収集方針の柱となっているフランスの素朴派です。専門的な教育を受けなくとも、生活を続けていくなかに創作活動が必要と感じ、そしてその作品が今も多くの人々の共感を集めている美術家たち。その存在は、現代の美術作品に対しても新鮮な眼差しを向けるきっかけを与えてくれているようです。
そこで、フランスの素朴派から現代の作品までに見ることができる生活と創作のあり方を、5つの物語に見立てて展示を構成しています。
生活と絵を描くこととが結びついた私の物語。未知の文化と出合うことで生まれる物語。言葉に寄り添うかたちで制作された美術。広大な宇宙と生きていることの神秘という物語。そして、なにげない日常から始まる物語。
生活することと表現することとのゆるやかな連携を、これらの物語から読み解くことになるでしょう。そして、日々暮らしていくなかで生活を彩るつつましやかな行為が、芸術表現の端緒でもあることに、気づくかもしれません。