2002年、兵庫県立美術館で内藤絹子の「言葉の遺伝子」に出会った。巨大な空間に何万語の文字が書かれ、螺旋状にうねるDNAのようでもあり、銀河系のようでもあり、その神秘性とパワーに圧倒された。そして、2011年に個展をお願いした。出会って14年、前回から5年。
朝来市和田山町の自邸のアトリエは豊かな自然環境に囲まれている上に、5年前に訪ねたころからに比して小さな山や森をなし畑をなしている。エッセイで内藤は「耕す絵画」と呼び「私の制作行為とは画面の上に一粒の精神の種を蒔いて耕すことと同じなのだろう」と書く。この間にも海外にわたり、内部に蓄えてきた祈りの言葉はそうした体験を孕み込みながら熟成し発酵してきた。独特のモノタイプドローイングに加えて新しい挑戦も見られるようだ。
祈りのうちに立ち上ってくる光。それこそが明日の希望を育ててくれる一粒の種なのです。 島田 誠