1910年代後半、化粧品事業に主軸をおいて経営に乗り出した初代社長の福原信三は、パリの芸術文化への憧れとともに、「香りを芸術まで高めたい」という想いで西欧の香水に勝るとも劣らない日本のオリジナリティあふれる香水づくりをめざしました。福原信三は、芸術とビジネスのコンビネーションを常に念頭におき、自らの化粧品づくりの姿勢を「商品の芸術化」という言葉で表しました。福原信三は化粧品製造にあたって西欧文化の消化に努め、それを栄養素としながらも、日本的美意識をベースに、製品の細部にまでこだわった日本発の本物を生み出そうとしました。
この「商品の芸術化」という精神は、今日の資生堂の商品開発まで受け継がれています。
この度、資生堂ギャラリーでは、福原信三が憧れたパリの芸術文化の一端を示すフランスの香水瓶とともに、福原信三が自ら手がけた初期の資生堂の香水瓶と「商品の芸術化」の精神を受け継ぐ現代の香水瓶(約40点)を展示します。
ガラス工芸家 ルネ・ラリックがデザインした香水瓶を始めとするフランスの香水瓶は、初期の資生堂がめざした格調ある西欧の香水瓶の魅力を放ちます。また、「梅」や「セレナーデ」など資生堂が戦前に完成させた日本的なスタイルの香水には西欧の香水瓶とは一線を画す独自のデザイン的な豊かさがみなぎっています。これらと併せて展示する現代の資生堂デザイナーが生み出す香水瓶にも独自のデザイン感覚を感じ取っていただくことができれば幸いです。
展示空間の演出は、インタラクティブ・アート/デザインのグループ「plaplax(プラプラックス)」とのコラボレーションにより、香水瓶の魅力を引き出します。ギャラリーの空間全体から深みのある香水瓶の世界をお楽しみください。
なお、同時期に資生堂銀座ビルでは、戦後から現代に至る資生堂製品の香水瓶(約50点)、SHISEIDO THE GINZAでは、「セルジュ・ルタンス」の香水瓶、資生堂パーラービル(東京銀座資生堂ビル)では、「現代詩花椿賞」の受賞者に贈呈された特製香水入れを展示します。