私たちはミケランジェロやロダン等を通じて「彫刻」というジャンルに親しんでいますが、昨今の立体的な作品に関しては、「立体」とか、「インスタレーション」等と言ったりしています。多様な可能性へ向かって歩み始めると同時に、その存在について様々な問答を繰り返した「彫刻」は、この百年で何を得、どこへ向うのでしょう。本展では主に1980年代以降に活動を始めた鷲見和紀郎、土屋公雄、藤堂良浩、中村哲也、丸山富之といった現代作家5名の新作を中心として紹介、それぞれの「かたちの所以」を探り、「彫刻」という枠組みと、その可能性について考えようというものです。
本展出品作品にも学校で習った彫刻という枠からは少し、いえ、大分離れた作品が多いように思います。そこには新しいものだけでなく、絵画や工芸、明治期に設定された「彫刻」の枠から外れた要素への興味が見受けられるように思います。そうした作品について彫刻という先入観から少し離れ、旅先ではじめて言葉を交わした人の話を聞いている時のように自由な気持ちで接してみて下さい。すると意外にも今までとは違った作品に見えるかもしれません。