アルフォンス・ミュシャ(ミュシャはフランス語表記、チェコ語はムハ。1860~1939)は、オーストリア帝国に属していたチェコに生まれ、幼い時より絵を描き続け、近隣の領主エゴン伯爵にその才能を認められ、1887年、伯爵の援助を受け、パリに美術留学しました。しかし、1889年、突如、援助を打ち切られたために、挿絵などを描いて生計を立てざるを得なくなりました。
1894年の暮れ、大女優サラ・ベルナールが主演する正月公演のポスターの依頼を受け、短期間でポスター《ジスモンダ》を制作、このポスターは圧倒的な人気を博し、ミュシャは無名の挿絵画家から一躍、デザイン界のスターとなりました。
その後、サラの芝居のポスターをはじめ、菓子、香水、自転車、旅行などの広告ポスターや装飾パネル、さらに豪華本の挿絵などを次々に制作、1900年にはパリ万国博覧会でも注目を集め、アール・ヌーヴォーの旗手としての地位を不動のものとしました。
1910年、パリでの栄光を捨て故郷チェコに帰り、スラヴ民族・文化に関わる作品に取り組み、そして、1918年独立を果たしたチェコスロバキアの国家行事のポスター、紙幣、切手などのデザインを次々に手がけました。
本展では、代表作《ジスモンダ》(アメリカンツアー、1895年)をはじめ、ポスターから、装飾パネル、本の挿絵、雑誌の表紙、ポストカード、切手、紙幣に至るまでミュシャの制作活動の全容を紹介します。