2002年は、日本とパキスタンの国交樹立50周年にあたります。これを記念して、ガンダーラ彫刻の名品展を企画いたしました。ガンダーラ美術は、紀元1世紀に興ったクシャーン朝の時代に大きく花開き、またこの時代にインドのマトゥラーとならんで仏像の制作が始まったことはよく知られています。仏像の姿や寺院の装飾モティーフは、ヘレニズム・ローマ世界の文化や、西アジア世界の影響を色濃く示しており、外来文化の摂取と需要によって成立したガンダーラ文化の多様な側面がうかがわれます。また、仏陀の生涯を綴った仏伝美術が発達したのもガンダーラ美術の大きな特徴の1つです。
本展では、パキスタン各地の博物館所蔵の厳選された名品を通して、その見事な造形美をご覧いただきます。また、本展では、東京国立博物館の組織した考古学調査隊が1999年にパキスタンで行った発掘調査の際に出土した作品を初披露いたします。東博隊は、1992年に北西辺境州の遺跡調査を開始し、1995年から仏教寺院遺跡ザールデリーの発掘調査を実施しています。これらパキスタンにおける日本人による学術調査の成果もご紹介します。