1886年、盛岡市に生まれた五味清吉は、1906年に上京して2年後に東京美術学校西洋画科に入学、明るい戸外の光に照らされた外光表現を学びまし た。文展や帝展などの官展を主な発表の場とした彼は、代表作である女性像をはじめ、風景画や肖像画から、今日では目にすることのない神話画や歴史画に至るまで、幅広い分野の絵画制作を手がけました。また、故郷岩手においても美術団体の設立に関わり、積極的に出品を行うなど、郷土の美術界の発展に大きく貢献 したことでも知られています。
1942年、五味は脳溢血(のういっけつ)で倒れ、左半身の自由が利かなくなりますが、その制作意欲は衰えることなく、1954年に没するまで制作を続けました。
五味の生誕130年を記念して開催される本展では、当美術館所蔵の油彩作品のほか、岩手県では初公開となる県外に所蔵されている作品、さらに歴史画や油彩屏風なども含めた初期から晩年に至るまでの代表作品を一堂に展示します。また、当時の美術界の動向も取り上げながら、彼が大正・昭和期の美術界で果たしてきた役割を明らかにしていきます。
五味が生涯を通じて探求し続けた、穏やかな美の世界をお楽しみください。