日本画の絵具の黒は、さまざまな原料をもとにして製造されているために、微かな色味を持っています。
古来より、日本画の黒として使用された墨(和墨)には、菜種油を燃やして得た油煙墨と、松を燃やして得た松煙墨があり、それぞれ茶墨、青墨と呼ばれるように微妙な色味を帯びています。また、天然岩絵具の場合は、酸化鉄から得た黒砂、群青や群緑を焼いた黒群青、黒群緑などが広く知られています。
昭和・平成を代表する日本画家髙山辰雄は、晩年、特に黒を重視し、群青や緑青を焼いて自分だけの黒を作り、使用していました。
今回は、群緑を焼いて独自の黒を使用した髙山辰雄の《雲煙に飛翔》、流れるような筆使いで墨の特性を生かした釘宮對宕の《裸婦》、力強い濃黒を作風に取り入れた箱崎睦昌の《渦潮》など、黒色を活かして制作した作品を中心に展示し、さまざまな表情を見せる黒色の魅力を紹介します。