江戸の庶民文化が色濃く残る明治の東京の風情は、それが失われた昭和以降、鏑木清方が「心のふるさと」と思い、制作のよすがにした題材でした。
清方は大正の末より、官展などの大展覧会へ実在の人物を美人画や肖像画にあらわし、出品します。一方、市井の展覧会へは、過ぎ去りし時代の文化に材を求め、季節感あふれる庶民の暮らしの風情を描いて画域を広げ、絵巻物の制作や表装への彩色など、新たな表現も追求しました。
本特別展では、昭和前期に<七絃会>など市井展で発表された作品を中心に、清方芸術の精髄の一端を紹介いたします。