17世紀初頭、佐賀・有田に日本初の磁器として誕生した伊万里焼。当時日本へ盛んに輸入されていた中国陶磁への憧れから、有田でも間もなく染付 (そめつけ) の製品が生産されるようにになりました。染付とは、器胎に呉須 (ごす)(酸化コバルトを主成分とする絵具)で文様を描く技法、あるいはそのやきもののこと。釉薬を掛ける前に絵付けをする釉下彩 (ゆうかさい)の一種で、焼成後は青く発色します。中国や朝鮮では「青花 (せいか)」、英語では「blue-and-white」などと呼ばれますが、日本では紋様を染め付けるところから発想を得て、「染付」の名がついたと考えられています。
“古伊万里染付”と一口に言っても、素朴な味わいのあるものから、青1色とは思えない華やかなものまで、その表現は実に様々です。今展では、その魅力を3つの観点からご紹介いたします。
1つ目の観点は時代によって変化する趣です。古伊万里は、現代では美術品として鑑賞されるようになりましたが、江戸時代の人々にとっては実用的なうつわでした。そのため時代の要求や流行を取り入れ、次々とその姿を変化させています。2つ目に多彩な技法が挙げられます。単に線を引くだけではなく、面を塗りつぶす濃 (だみ) をしてその濃淡を色々と変えたり、吹墨 (ふきずみ) や墨弾 (すみはじ) きなどの技法を用いることで、青1色でも豊かな表現を生み出しています。3つ目は他色との調和です。染付はそれだけでも十分主役として成立しますが、他の色と組み合わさった時、その味わいはさらに豊かなものとなります。時には青磁釉を背景に柔らかな風合に仕上げたり、時には銹釉を施して陶器風に見せたりすることによって、表情は様々に変化します。
以上のような古伊万里染付の魅力を、当館所蔵品約80点からご覧いただきます。