ユーラシア大陸の東の一角に位置する朝鮮半島の美術は,大陸に興亡した諸王朝と深い関わりを持ちながら発展しました。また、その作品は隣国の日本にも多く伝わり、愛されてきました。
この展観では、精緻な技巧を誇る新羅(しらぎ)時代の飾金具、可憐な象嵌(ぞうがん)が施された高麗(こうらい)時代の青磁、大胆な植物文様が美しい朝鮮時代の螺鈿漆器(らでんしっき)など、当館所蔵の工芸の名品を一堂に展示し、5世紀から19世紀にかけて培(つちか)われた、この地域の美意識を紹介します。
続いて初公開の特別陳列作品を交え、15世紀から16世紀に朝鮮半島で流行した、李郭派(りかくは)山水図の発展の軌跡を特集します。李郭派山水図は、中国華北地方に始まりますが、朝鮮の画家もその表現をよく学習し、峻厳(しゅんげん)な大山を幽遠(ゆうえん)な大気の中に見事に表してきました。ここでは、朝鮮の山水図が中国の影響をどのように消化し、独自の味わいを醸成させていったかを探りたいと思います。以上を通じ、金工・陶磁・漆工・絵画の各分野にわたる、朝鮮美術のすばらしさを幅広く楽しんでいただける展観を目指します。(担当 古川攝一・都甲さやか)