版画を見る喜びは、その作品から作者が版に向かう姿や息遣いを感じることができるということでしょう。版から紙に写し取られた線の強弱や表情、インクのにじみ具合などが、制作時の作者の手の動きを思い起こさせるからです。
ヴォルスはドイツ生まれのアンフォルメルの代表的作家で、パリやアメリカで制作しました。彼は画家というだけでなく、写真家・詩人でもありました。1951年にアルコール中毒で死亡しましたが、死や性をありありと感じさせる作風が特徴です。
ポロックはアメリカで活躍した抽象表現主義の代表的作家で、床にしいたキャンバスに絵の具をたたきつけて描くドリップ・ペインティングという技法で知られました。
同時代に生きた2人の画家は、制作した場所こそ異なりますが、両者ともさまざまな技法を用いた銅版画を残しています。技法の差異や2人の画風の違いによって、版画が発する力や、作品に向けられた作者のまなざしを感じていただければと思います。