兵庫県立美術館では、平成22年度より「注目作家紹介プログラム チャンネル」の試みを始め、学芸員が注目する作家の個展を開催してきました。このプログラムは、今日ますます自由に、大胆に、多様になっていきている「私たちの時代」の芸術表現を、いちはやく皆さまに紹介することを目的にしています。6年目を迎える今回は、国谷隆志(くにたに・たかし、1974年生まれ)の個展を開催します。
国谷隆志は、鏡や紙幣、砂時計、羽毛などをモチーフにして、ものの固有性を詩的に増幅させるような作品をつくってきました。なかでも独自に加工したネオン管を、場を取り込んで展示する作品は、彼の興味をよく物語っています。
国谷はまず、ネオン管を熱して息を吹き入れ、連続した膨らみをつくります。そしてそれを配置するにあたり、本来は表に出ない変圧器やコードもあえて一緒に見せます。こうすることによって、構造をあらわにしたネオン管が、サインとしてでも照明としてでもないままで、連なった球状の光をゆらゆらと浮遊させる不思議な空間を生むのです。
本展覧会のタイトル “Deep Projection (深い突起)” は、一見すると逆説的で意味を捉えがたいのですが、実は、展示室の高さと奥行きに国谷がどのように働きかけるかに深く関係しています。会場でぜひ、その意味について考えてみてください。
また、当館所蔵のアルベルト・ジャコメッティ作品に呼応する形で、国谷が継続して制作しているネオン管によるシリーズ《Untitled》の新作の展示も予定しています。