思わず息をのむ、細密さ。目を疑うような、リアリティ。
近年、メディアでも盛んに取り上げられ、注目を集めている明治の工芸。激動の時代に花開いた、精緻きわまりない超絶技巧の数々は、眩暈 (めまい) がするような衝撃をもって私たちを魅了します。しかしその多くは当時輸出用として制作されたため、海外で高い評価を得てきた一方、日本国内において全貌を目にする機会はこれまでほとんどありませんでした。
忘れられかけた明治工芸の魅力を伝えるべく、長年をかけて今や質・量ともに世界随一と評されるコレクションを築き上げたのが、村田理如 (まさゆき) 氏です。本展では、村田氏の収集による京都・清水三年坂 (きよみずさんねんざか) 美術館の所蔵品から、選りすぐりの逸品を一堂に公開します。
並河靖之 (なみかわ やすゆき) らの七宝 (しっぽう)、正阿弥勝義 (しょうあみ かつよし) らの金工、柴田是真 (しばた ぜしん)・白山松哉 (しらやま しょうさい) らの漆工、旭玉山 (あさひ ぎょくざん)・安藤緑山 (あんどう ろくざん)らの牙彫 (げちょう)、そして薩摩、印籠 (いんろう)、刀装具、自在、刺繍絵画―。
多彩なジャンルにわたる約160点の優品を通して、明治の匠たちが魂を込めた、精密で華麗な明治工芸の粋 (すい) をお楽しみください。