鉄彫刻のパイオニアとして現在も大きな尊敬を集めているスペイン、バルセロナ出身の彫刻家フリオ・ゴンサレス (Julio González / 1876~1942)。「溶接」という技術を作品制作に取り入れ、デイヴィッド・スミス、アンソニー・カロ、エドゥアルド・チリーダなど後に続く主要な作家たちの進むべき道を拓いた彼は、ブランクーシやジャコメッティらと並び20世紀の彫刻の展開に決定的な影響を与えた存在であると言われています。
10代の頃より父親の工房で金工職人としての修行を積んだゴンサレスは、そこで金属加工の高度な技術を身に付け生涯それを収入の糧とします。一方で、若き日のピカソも通ったカフェ「クアトラ・ガッツ」に出入りし当時の最先端の芸術の空気を吸ったゴンサレスは、やがて画家となることを志し、父親の死後、1900年に一家とともにパリに移住しました。そしてサロン・デザンデパンダンやサロン・ドトンヌ等の展覧会へ油彩画の出品を重ねた後、古くからの親しい友人であったピカソとのコラボレーションを契機に自らの進む芸術の道を「彫刻」に定めます。
ゴンサレスが自覚的に彫刻家としての活動を開始したのは50代も半ばにさしかかった頃。その後、晩年に至るわずか10年余りの間に、鉄を鍛え、切断し、曲げ、溶接しつつ“物質と空間の不可分な結合により生み出される彫刻”という独自のコンセプトのもとで魅力的な作品の数々を生み出しました。
ゴンサレスの仕事を体系的に紹介する日本初の機会となる本展は、作家の充実したコレクションを擁するバレンシア現代美術館(IVAM)の所蔵品を中心に構成されます。鉄のオリジナル作品はもとより、1910年代の最初期の作例や1930年代の石の直彫り作品を含む彫刻55点のほか、金工細工、ドローイングなど総数約100点の作品により、20世紀の彫刻の歴史にゴンサレスが残した大きな足跡をご紹介します。