豊かな歴史や文化を持つ和歌山は、日本画の分野でも近現代美術を開拓してきたすぐれた画家を輩出し、また多くの日本画家が風光明媚なこの地を訪れ画題としてきました。この展覧会では、当館が和歌山ゆかりの日本画家を中心にして培ってきた日本画コレクションの中から、代表的な作品をご紹介します。
日本美術院の創設に携わった下村観山 (しもむら かんざん)(1862~1930)、同院で作品を発表し、青龍社を主宰した川端龍子 (かわばた りゅうし)(1885~1966)はともに東京で活躍した和歌山市出身の画家です。当館の所蔵品の中でも注目される彼らの作品は、それまでの日本画のあり方に一石を投じました。
一方、和歌山県田辺市出身で、国画創作協会の設立に加わった野長瀬晩花 (のながせ ばんか)(1889~1964)を軸に、晩花と交友の深い秦テルヲ (はだ てるお)(1887~1945)や国画創作協会会員の土田麦僊 (つちだ ばくせん)(1887~1936)らのほか、同会にも参加した日高昌克 (ひだか しょうこく)(1881~1961)、日本南画院で活躍した山口八九子 (やまぐち はちくし)(1890~1933)など和歌山に縁深い作家を含め、当館ではその周辺の京都画壇に関しても収集を進めてきました。今や当館の日本画コレクションの大部分を占めるこれらの作品には、目覚ましく揺れ動く京都の日本画の状況がうかがえます。
また、戦後関西で結成されたパンリアル美術協会の三上誠 (みかみ まこと)(1919~1972)、下村良之介 (しもむら りょうのすけ)(1923~1998)らの、日本画の従来の枠組みを超えた前衛的な表現から、現在も第一線で活躍する和歌山県田辺市出身の稗田一穂 (ひえだ かずほ)(1920~)の日本画の伝統に根ざした詩情あふれる表現にいたるまで、幅広い作風をもつ当館所蔵の現代作品も、日本画の新たな可能性を考える上で欠かせない存在です。
本展覧会では、主に当館の所蔵品から和歌山ゆかりの作家や同時代の作家の名品を展示し、伝統と革新が交錯する近現代の日本画の魅力に迫ります。