「わたし」を育てた「自然環境」はすでに破壊され失われました。でも夜見る夢のなかには、いまだ常に、生き物の吐息の満ちた水辺の情景が広がっています。胸の揺さぶられるような、その情感のリアリティが、わたしにとっての現実なのか、今目の前にある、無感動で虚無的な情景こそが文字通りのリアルととらえるべきなのか。人が生き物の営みの世界を破壊する。自然災害は恐ろしいものですが、人がそれと同じことをやってのけられることの方が恐ろしい、とも思えます。その環境に心を奪われるのも人なら、破壊するのも人。今回の展覧会では特に、愚かしく救いよう無い「人」の姿を象徴的に描こうと思いました。失ったものを忘れた人たちの姿です。 森井宏青