京都国立博物館が保管する坂本龍馬関係資料が国の重要文化財に指定されたのは平成11年のことでした。それを契機に開催するようになった特別陳列も四年目を迎え、夏休み期間の恒例行事としてすっかり定着した感があります。毎回思いのほか多くの来館者を迎え、坂本龍馬の人気の高さに改めて驚かされています。
今年夏も博物館所蔵の龍馬の手紙を中心に、彼の遺品類や幕末関係資料等を2室にわたりを展示いたします。
坂本龍馬は天保6年に土佐、現在の高知市で生まれ、慶応三年に京都河原町の近江屋で刺客の手にかかって亡くなりました。龍馬の生涯はわずか33年でしかありませんでしたが、薩長同盟と大政奉還の二大事業を成功させ、維新の扉を開くという大きな力を発揮した一生だったとされています。
今回の展示の見所としてはやはり龍馬の手紙をあげるべきでしょう。博物館には直筆の手紙が十通余り有りますが、多くは実家の姉乙女に宛てたもので、身内に対する気楽さからか龍馬の心情が赤裸々に綴られています。あたかも肉声を聞いているような生々しさのある手紙群です。またその描写は近代の文章表現に近い平明なもので、龍馬の感性が近代人のそれに近いものであることがよく分かります。
手紙以外には坂本家の家系図や海援隊関係資料、剣術の免状や愛用の紙入、刀(銘吉行)、近江屋での暗殺時の惨状を今に伝える血染の掛軸と屏風などを展示いたします。また近江屋に伝来した龍馬関係資料や博物館が保管する「伏見鳥羽戦争図」や「近世珍話」などの幕末関係の絵画資料も併せて展示いたします。この龍馬展を通じて坂本龍馬と彼の生きた幕末という時代に対する認識を少しでも深めていただければ幸いです。