旅とは何でしょうか。日常生活を離れて別の土地へと移動し、そこで出会うものに驚き、感動をおぼえ、世界の多様性を感じとることでしょう。その驚きと感動を記憶するために、あるいは家族や友人、世間にも伝えるために、旅人たちは日誌をつけたり手紙を書いたり、記念の品を持ち帰ったり、風景や人物を描いたりしてきました。さらに写真という技術が実用化されてからは、旅先での光景を撮影するようにもなったのです。
やがて交通と観光が発達するにつれて、また社会環境が変化するにつれて、旅のもつ意味も大きくかわってきました。異郷への好奇心やエグゾティスム、遠い過去へのノスタルジア、近郊の田園の再発見、空想世界への憧れなど、旅への想いは時代や社会の姿を敏感に映してきたのです。
この展覧会は、旅をめぐるさまざまなテーマを、主に西洋近代の絵画や版画、写真、挿絵本などを通して読み解きながら、みなさんを「旅と芸術」のすてきな物語へと誘 (いざな) います。