詩情豊かな作風で大正から昭和期の版画界をリードした川上澄生(1895-1972)の生誕120年を記念し、川上澄生の生涯をたどりながらその画業を3期に分けて紹介する企画展「木版画の詩人 川上澄生の軌跡」を開催します。本展はその第1弾となります。
横浜に生まれ、東京で育った川上澄生は青山学院中等科から高等科在学中にかけて芸術や文学へ強い関心を持ちました。その頃より雑誌にコマ絵や詩を投稿し腕を磨きました。同級生にはフランスから木口 (こぐち) 木版の技術を日本に移入した合田 (ごうだ) 清の息子がおり、木版画に興味を持つきっかけとなりました。
卒業後、カナダ、アラスカ放浪の旅をへて1921年(大正10)、栃木県立宇都宮中学校(現・宇都宮高等学校)の英語教師となり、その頃より本格的に木版画を始めました。多忙な教師生活の中、創作版画誌や展覧会への出品を通じて多くの版画家と交流し、充実した創作活動を行いました。この頃の川上澄生の創作源は女性へのあこがれ、南蛮文化や文明開化への郷愁であり、こうした想いを版画や詩に刻み続け、時代に流されることなく独自の創作世界を展開しました。
本展では、若き日のみずみずしい感性が光る代表作を中心に、北海道へ疎開するまでの戦前の画業から川上澄生の多彩な創作活動の軌跡をたどります。