アサバの骨法
昔からアサバさんの文字が好きだ。ふだんのペン書き文字も、若いときからのタイポグラフィも、また顔真卿や黄庭堅が好きだという書道の文字も、その根本に骨法があるからだ。
それがデザインされると、ヒューマンで酒脱な味がつき、しだいにコミュニカティブなものに変貌する。とくに線条と陰影とおまけの関係が絶妙になる。ところが、そこにもアサバの骨法は生きていて、凛然たる姿勢を失わない。遊び心に富んだトンパ文字ですら、風姿花伝をもっている。
変人アサバのこと、そうそうどこででも凛然としているはずがないと訝る向きがあるかもしれないが、いやいや、どっこい、生活と思想の身上にそもそも骨法があって、崩れそうで崩れないのだ。
それは何十年も書き続けている日記の筆勢と内容を見るか、卓球の試合を見れば、すぐわかる。
松岡正剛