日展を脱退し、日本画の異端児と称された中村正義(1924~1977)には、画風を一転させて画壇の中で孤立した後にも熱心な支援者がいました。自己を貫き通す激しい生き様に共鳴し、その過激な作風に魅了されたコレクターは多々いますが、なかでも福島県の故・小松三郎氏は、秀逸なコレクションを築いたばかりでなく、正義作品を中心に展示する「いわき近代美術館」を昭和58年に開設するなど(現在は閉館)、正義没後もその画業を世に残そうと尽力しました。
画家とコレクターの出会いは正義の没する4年前、病と闘いながらも从会や東京展を発足し、残されたわずかな時間を燃焼するかのように奔走した時期にあたります。そのため、晩期の代表作や絶筆がコレクションの核となりましたが、そのほかにも自画像や顔シリーズ、裸婦、仏画、薔薇、水墨画、墨書など、その収集内容は多岐にわたっています。このたびの展覧会は小松市ご遺族の協力を得て、56点の中村正義作品をまとめて紹介するはじめての機会であり、現在は豊橋市美術博物館が所蔵している旧小松コレクションの《おそれA》《おそれB》《舞妓》《うしろの人》もあわせて展示し、一人のコレクターの眼を通してとらえた中村正義の魅力に迫ります。