小谷博貞は、北海道における抽象絵画のパイオニアのひとりです。1915(大正4)年8月に札幌に生まれ、札幌第一中学校(現・札幌南高等学校)を卒業。中学校時代に三岸好太郎の作品に出会ったことを契機に、画家を目指します。19歳で上京し、多摩帝国美術学校(現・多摩美術大学)図案科に学びました。在学中から自由美術家協会展などに出品し、卒業後は東京の映画制作会社で美術映画制作にも携わりながら画業を続けました。1957(昭和32)年に札幌へ帰郷した後は、道展や創立に参加した主体美術展などに出品。また、美術批評にも筆をふるう一方で、1967(昭和42)年から1993(平成5)年まで札幌大谷短期大学美術科教授を務め、美術教育に力を注ぎました。
小谷は、キュビスム、構成主義、シュルレアリスムなど、20世紀前半の西洋美術の動向について深く考察し、取り入れながら、自らの抽象表現を拓いていきました。その作風は、幾何学的で理知的な構成の中にゆたかな詩情をたたえたものです。
本展では、小谷の生誕100年を記念して、北海道立近代美術館が所蔵する作品を中心に、その画業を振り返ります。試行錯誤を重ね、ときには冒険的に、抽象表現を探求した小谷博貞の世界をご覧ください。