タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムでは、10月25日(土)から12月6日(土)まで、レオ・ルビンファイン個展「Vintage prints from “A MAP OF THE EAST” 1980―87」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの2度目の個展となる本展では、1980年から87年にかけて、作家が日本を中心にアジア各地を取材撮影して纏めたシリーズ「A MAP OF THE EAST」より、カラー写真作品17点を展示いたします。
1953年、シカゴ生まれのルビンファインは、両親に伴われて、少年期以降の多くの年月を高度経済成長期の日本で過ごしました。その後、1979年に日本に戻った作家は、自身の少年期の体験から再び東洋という被写体に惹かれ、翌年より8年間、日本をはじめ、中国、タイ、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ベトナムへと繰り返し旅を続けます。「A MAP OF THE EAST(東洋の地図)」と題されたこのシリーズは、自身の記憶を通して世界を見ることの意味を探求すると同時に、つねに侵入者という立場であった一西洋人の視点から、当時の東洋に共通する特質であり、確実に変容しつつあった「イノセンス(おおらかな無邪気さ、純真さ)」を語ろうとする試みでもありました。
今回写真を撮るに当たって終始私をつき動かしていたのは、一体どれだけのものが損われ、どれだけのものがまだ残っているのか、という問いかけであった。もちろん、ここにある写真はその問いに答えるものではない。ただ、あらためていま写真を眺めてみると(多くは5年以前に撮られたものであるが)、そこに見えてくる二面性に驚かされる。やさしさとアイロニーの交錯するその語りかけは、しかしきわめて当然な在りようだと、私には思えてくる。私たちは確かに失い続けてはいるが、何を失ったのかを知り、何が残されているのかをはっきり受け止めることで、逆に豊かさというものをしっかり受けとめることもできるのだと思う。 レオ・ルビンファイン (『A MAP OF THE EAST』、都市出版、1992年、序文より抜粋)
作品集『A MAP OF THE EAST』は、メトロポリタン美術館での個展に合わせて1992年に出版されました。当時の月刊文芸誌『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』では、イアン・ブルマ氏による以下の書評が掲載されました。
1970年代末に写真家としての活動を開始したルビンファインは、1980年代初めに「ニュー・カラー」と呼ばれた、新たなカラー写真表現を追究する若手アメリカ人写真家の一人として注目されました。以後、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ニューヨーク近代美術館、東京国立近代美術館、サンフランシスコ近代美術館など、アメリカ、ヨーロッパ、日本の美術館を中心に、数多くの展覧会で作品を発表するとともに、各国の美術館に作品が収蔵されています。主な写真集に『A MAP OF THE EAST』(David R. Godine / Thames and Hudson / 都市出版、1992年)、『Wounded Cities』(Steidl、2008年)など。写真や美術を中心とした評論・執筆活動でも知られ、『Shomei Tomatsu: Skin of the Nation』(Yale University Press、2004年)、『Garry Winogrand』(Yale University Press、2013年)などの展覧会カタログにも寄稿しています。
本展の開催を記念し、『A MAP OF THE EAST』(1992年)では未発表となった作品を纏め、新たに作品集を刊行いたします。