500年の時を経て、なおも世界に流通するインド更紗の遺伝子。
更紗の時代は、終わらない。
数千年の昔、茜を用いて色鮮やかで、堅牢な染をほどこす技術が開発されたのは、インド亜大陸であった。その技術を用いれば、木綿という、優れた機能を持つ、しかし染色の難しい素材でも、鮮烈な色模様が染められた。こうした媒染染めと、防染染めの技法を駆使して濃密な文様で飾られた木綿布は「更紗」と呼ばれて、世界を経巡る貿易アイテムとなる。
更紗は、遠く離れた地の人々を結びつけ、その交流は新しい美を創造するに至り、更紗の美はグローバルな価値観となった。
本展は、世界中が更紗を求め、美意識を共有し、交流した約500年にわたる時代をたどるものである。
アジアからアフリカにかけて享受されていたインド更紗、大航海時代のヨーロッパ参入以後、急速に日本の文化に浸透していく更紗、ヨーロッパ、アジア諸国での受容の姿、インド更紗を目指してヨーロッパ、インドネシア、日本で創造された独自の更紗を展示する。さらに、トレードテキスタイルとして長く命脈を保ってきた更紗の子孫ともいうべき「アフリカン・プリント」「カンガ」も紹介する。