今年、金沢21世紀美術館は開館10周年を迎えます。
「好奇心のあじわい 好奇心のミュージアム」は、10周年を機会に、博物館の原点である「好奇心」に立ち返り、ものを集め、並べ、眺め、触れ、あじわうことの面白さとその意味を問い直そうというプログラムです。ミュージアムの原点は、15世紀頃から18世紀にかけて貴族たちが好奇心のおもむくまま自然物や人工物を陳列した「驚異の部屋(ヴンダーカンマー)」だと言われています。ミュージアムが細分化され、機能性や効率が求められるなか、かつて純粋にものの魅力に取りつかれた人たちがそうしたように、わき起こる好奇心に促されるような空間と時間を展示室につくりあげていきます。そして、美術館が五感を研ぎすます場であるならば、好奇心とより密接にかかわる味覚は、美術館においてもっと意識されるべきだと考えます。視覚だけでない味覚も含めたすべての感覚を凝縮した「あじわい」は、これまでにないミュージアムの体験にきっとつながるはずです。
本プログラムの中心となるのは、新たな食の価値を提案する諏訪綾子が主宰するフードクリエイションと、学術標本のミュージアムコレクションとしての価値に着目し、「驚異の部屋」のプロジェクトを数多く手がける東京大学総合研究博物館です。そして約30名のプログラム・メンバー[テイストハンター」たちが、想像のあじわいをもたらす「好奇心の食材」を集め、皆さまを「あじわいの体験」へとご案内いたします。内なる好奇心を呼び覚まし、あなたの舌であじわう体験に、ぜひいらしてください。
金沢21世紀美術館 キュレーター 高橋律子