戦後の日本の陶芸界を牽引した陶芸家、鈴木治(1926-2001)。千家十職の永樂工房で轆轤 (ろくろ) 職人をつとめた父に轆轤の手ほどきを受け、戦後本格的に陶芸の道に入った鈴木は、とりわけ1948年に八木一夫、山田光らとともに結成した前衛陶芸家集団「走泥社 (そうでいしゃ) 」の中心的存在として知られます。鈴木は作陶の思想を「泥象」、すなわち「土のかたち」という言葉に託し、土と火による造形を追求し続けました。赤い化粧土を施した焼締 (やきし) めと、清らかな青白磁 (せいはくじ) のふたつの技法を主軸とする鈴木の作品には、馬や鳥などの動物や自然現象に着想を得た、穏やかにして鋭いイメージが豊かに広がります。その長年の功績から、1999年には陶芸界から初となる朝日賞を受賞しました。
「<使う陶>から<観る陶>へ、<観る陶>から<詠む陶>へ」。鈴木がある作品のシリーズとともに発表したこのフレーズは、自らの足跡を語ったものとも読めます。本展は没後初めての大規模な個展として、初期から晩年の未発表作品までを含む約140点を紹介します。今なおみずみずしい鈴木の作陶の輝きを、どうぞ心ゆくまでお楽しみください。