世界は「向こう側」と「こちら側」に分けられる。
バカバカしくもこれは真実で、それらを隔てるのは、そびえ立つコンクリートの壁や地面に引かれた線だったり、三途の川だったり。応援している野球チームや思想信条の違いだったり、階段の上の扉一枚だったり。
「向こう側」と「こちら側」が果たして地続きの世界か、あるいは別の宇宙かは分からないが、とにかく林彩子は世界を分け、両者を串刺しにして、そこに互いが流れ込む小さな穴を空けた。
では、そこにまだ「向こう側」と「こちら側」はあるのだろうか。
コーディネーター:正木 裕介(Gallery PARC)