堀文子(ほり ふみこ)は、1918(大正7)年に東京に生まれ、幼少時に関東大震災、10代後半に二・二六事件を間近で体験するなど、多感な少女時代を激動の中で過ごしました。その中で、眼に映る色や形に心惹かれ、次第に絵の世界へと踏み込んでいきました。
女子美術専門学校(現 女子美術大学)在学中には新美術人協会に出品、戦後は創造美術(現 創画会)に参加するなど、新しい日本画の創造を目指して邁進 (まいしん) し、1952(昭和27)年には注目の女流日本画家として第2回上村松園賞を受賞しました。
1961(昭和36)年から、約3年にわたりヨーロッパ諸国やメキシコなどを旅し、1967(昭和42)年には東京を離れて神奈川県大磯の地へ転居、その後軽井沢にもアトリエを構えました。1987(昭和62)年には、70歳を目の前にイタリア・トスカーナ地方へアトリエを構え、その後はヒマラヤ山麓をはじめ各地を訪れるなどし、その時々の感動にもとづいた自由で清新な作品を数多く生み出しました。都市での生活を離れて自然の中に住み、そこに息づく生命の軌跡を見つめながら、96歳となった現在も精力的に創作活動を続けています。
本展では、画家が日々の生活や旅の中で眼のあたりにした自然の不思議さ、厳しさ、美しさを感じて制作された作品を中心に39点を展示します。時代を通じて自然、生命の不思議を見つめ続ける画家・堀文子の70余年にわたる画業をご展望ください。
また、特別出品として、創造美術から創画会に至る中で一時所属を同じくした秋野不矩の作品7点を展示します。