明治時代から平成の今日へ、日本では、伝統のわざや美を華やかに発展させ造形の可能性を開拓して、新しい時代の工芸が連綿と生みだされました。陶磁やガラス、漆工、染織、金工、人形等、さまざまな素材の魅力を訴え、時代に適合した自由な創作表現を主張して多くの作家達が活躍してきました。その多彩な芸術は、国内にとどまらず、国際的な評価をいよいよ高めています。
東京国立近代美術館では1977年に工芸館を開館して以来、伝統工芸や現代工芸の発展の動向を主軸にしながら、芸術としての近代工芸の系譜を歴史的に検証し得るコレクションの充実を図り、あわせて特に重要な分野や作家の作品収集に努めてきました。このたび、そうした多くの収蔵作品のなかから名品約130点を精選し、日本の近代工芸発展の歴史を回顧しながら工芸の美とちから、そして豊かな魅力をいっぱいにご紹介します。
本展では、近代工芸の確立期に活躍した漆工の赤塚自得や二十代堆朱楊成、金工の北原千鹿、また、戦後の陶芸を牽引した石黒宗麿や岡部嶺男、加守田章二、八木一夫、漆工の松田権六、ガラスの藤田喬平らの歴史的に重要な、近年に収蔵した作品も出陳します。