今回、東広島市立美術館では、市制40周年を記念して、当館が一大コレクションを誇る2人の木版画家の作品約80点を展示する大規模な展覧会を開催いたします。
皆様は、“木版画”に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?“木版画”は、学校の授業で扱われるなど日本では特に身近な“版画”として知られています。こうした日本の木版画は、特に1960年代以降「現代版画」として多様化の時代を迎えることとなります。今回はその中でも、木版の表現手法に広がりを与え、独自の世界観で人々を魅了してきた2人の木版画家を取り上げます。新緑の色増すこの季節、木の温もりによって生み出される、美しき表現世界の共演をぜひご覧ください。
東広島市立美術館では、開館以来近現代版画の収集を重点的に行ってきました。これまでの長年にわたる収集活動の中で、全収蔵作品の3分の2を占める507点の版画作品を収集しております。その当館の版画コレクションの中でも、一大コレクションを誇るのが、吹田文明、小林敬生両氏の版画作品です。
本展では、同じ木版領域にありながら、まったく異質の版木を使用するだけではなく、技法上でも共通点を見出すことの難しいこの2人の作家の作風の違いを対比させつつ、両氏の共通点である木版表現に「広がり」を追求した点、それぞれの「世界観」を重視した版画制作を行っている点をとりあげ展覧していきます。
表現領域の限られた木版あるいは木口木版から広がる新たな表現手法を通じて、その奥に潜む作家の精神的表現世界を感じてもらい、様々な年代の作風の変化や特徴、そして美しさを感じていただければ幸いです。