森村泰昌は、自らが作品の中に入り込む、という変種の自画像とも呼べる作品で知られる美術家です。セットや衣装を入念に作り込み、化粧をして、美術史に輝く有名名画や、歴史上の人物そっくりに扮した写真作品を数多く制作してきました。ファッションを収集の柱の一つとする当館では、スクリーンを華やかに彩った映画女優たちに扮したシリーズを所蔵しています。
このたびの展覧会では、森村が扮した沢山の女優のなかから8人の女優を取り上げ、19点の作品を展示します。役を通して様々な人生を演じる女優たちを、森村はさらに演じます。変幻自在に姿を変える森村の姿を通して、映画を彩った女優たちがどのように受容されたか、また「自分ではない誰かになる」とはどんなことかを考えるきっかけとなれば幸いです。