春の資生堂アートハウスは、収蔵品の中から竹工芸と金工の逸品を選んで展覧します。出品作家は、「竹工芸」の人間国宝で本年が没後10年にあたる飯塚小玕齋、金工は「彫金」の人間国宝内藤四郎ほか、鋳金作家として幅広く活躍した西 大由と染川鐵之助です。
飯塚は竹工芸を家業とする家系に生まれ、正倉院などに見られる古典技法を自家薬籠中のものとしながら、そこに現代的な創意を加味した作品の数々で高い評価を受けました。本展では、作者が56歳から76歳までの最もあぶらの乗り切った時期に手がけた代表作を一堂にご覧いただけます。
金工の内藤は鏨 (たがね) を用いて金属の表面に加飾を施す「彫金」の技法を駆使し、素朴さと繊細さを兼ね備えた独自の作風で一家を成しました。西 大由は日本古来の鋳造技法に卓越した造形感覚を融和させた大胆で現代的な作品を発表し、染川は伝統的な鋳金技法を基に、器形と材質を調和させた簡明で清らかな作風を展開しました。
本展出品作は、資生堂が芸術文化支援のために主催した「現代工藝展」(1975-1995)で発表された作品であり、いにしえより日本人の生活に深くなじんでいる竹工芸と金工の現在を紹介し、その滋味に富んだ味わいと洗練された造形の素晴らしさを十分にお楽しみいただける内容となっています。