河野保雄(1936-2013)は、有数の日本近代洋画コレクターです。
福島市に生まれ育ち、実業家として成功しますが、若くして指揮者の近衛秀麿に認められた音楽評論家でもありました。地元の画家・吉井忠などとの交流をきっかけにして、1960年代から洋画収集にのりだします。まだ目にすることが少なかった、長谷川利行、青木繁、関根正二など、個性あふれる画家たちの作品をいちはやく評価しました。
コレクションを公開するために、河野が1990年から2006年まで福島市内に開いたのが私設の「百点美術館」です。美術館は作品の質の高さによって注目を集めただけでなく、コンサートやパーティー、本の出版などを通じて、地域の文化サロンとしても親しまれました。1996年に主要作品を府中市に譲渡して以降は、愛らしいガラス絵や初山滋、谷内六郎の童画などを加え、自ら「美のおもちゃ箱」と名付けた幅の広いコレクションに展開させました。
選ばれた作品のいずれもが、素朴な詩情をただよわせながら、芸術とは何か、生きるとは何かと問いかけてきます。深い人間愛に貫かれたコレクションは、震災を経た今日にあって、なお輝きを増すばかりです。
本展は、河野コレクションを引き継ぎ、まとめて収蔵・受託する、府中市美術館と福島県立美術館が共同で企画しました。昨年10月に77歳で急逝した河野が、生涯にわたって収集した400点あまりの作品を一堂に集め、コレクションの全貌に迫ります。