佐野洋子は、1974年に『おじさんのかさ』で絵本作家として注目を浴び、その3年後に発表した『100万回生きたねこ』で絵本界にその名を不動のものとしました。その後、『わたしが妹だったとき』(1982年)などの童話を発表する傍らエッセイの世界でも活躍し、第3回小林秀雄賞を受賞した『神も仏もありませぬ』(2003年)や、自分と母親の葛藤の日々を記した『シズコさん』(2008年)で多くの人々の共感を得ています。子ども時代の類まれな記憶力をもつ彼女は、独得の視点から人間の本質をユーモアたっぷりに捉えることができました。そして世代を超えた人々に人生を謳歌する勇気を与え続けたのです。本展は2010年11月、72歳で世を去った佐野洋子の軌跡を、約300点の絵本、挿絵の原画を中心にたどる没後初めての回顧展です。