太陽が遠のいて夜が長くなる季節、子どもたちはサンタクロースを待ち焦がれ、大人たちは家族や恋人に向けた贈り物の支度をします。現在のようなクリスマスの風習が広がる以前、北半球の各地では様々な形で冬至祭が行われていました。闇の退去と光の再生を願い、自然の恵みに感謝して祈りを捧げたのです。フィンランドに12世紀から伝わる冬至祭の装飾品「ヒンメリ」は麦わらに糸を通して作られるモビールで、その名は「天」を意味すると言われます。暖かい陽を浴びて大地に育った麦は、ヒンメリに姿を変えることで光の依り代となり、人の心を天へ届けてくれたのかもしれません。2006年にヒンメリの制作を始め、素材と形に込められた自然観を研究してきた造形作家のおおくぼともこさんは、正八面体を基本構造とするヒンメリを「祈りの結晶」と意味づけて新しいデザインを生み出しています。空中で静かに回るヒンメリの美にふれて、古代の人々がお祝いした光の誕生に想いを馳せ、贈り物とは何か、あらためて考える時間を持っていただけたら幸いです。