中谷泰(1909~1993)は、三重県松阪市出身の洋画家です。昭和4(1929)年、20歳の時に画家を志し上京、川端画学校に学び、昭和5(1930)年の第8回春陽会展で《街かど》が初入選を果たします。その後の一時帰京を経て再上京した中谷は、春陽会洋画研究所で木村荘八に師事して研究を続けました。
昭和13(1938)年の第16回春陽会展に出品した《レダ》、《水浴図》が春陽会賞を受賞、翌年には春陽会会友、昭和18年(1943)年には会員となります。また昭和14年(1939)と昭和17(1942)年の文展出品作《秋日》と《水浴》はともに特選を受賞し、この頃から中谷泰は画家としての頭角を現します。
戦後、中谷は春陽会をはじめとする多くの展覧会に出品を続け、また昭和46(1971)年から52(1977)年にかけては東京藝術大学教授をつとめるなど、洋画界で重要な役割を果たしました。
中谷泰の作品は奇をてらわない身近なテーマを扱い、落ち着いた色調の画面に細やかな情趣を漂わせています。中でも炭鉱や陶土、労働者らを主題とした作品では、人々が生活し労働する現場がヒューマンな共感をこめて描き出されています。質朴な画家人生を貫いた中谷作品は、深い内容と強固な構造を備え、戦後洋画史において高く評価されています。
歿後20年という節目の年に開催する今回の展覧会は、未発表作品等もまじえて洋画家中谷泰の作品が持つ今日的な意味に迫ります。