本展では、当館所蔵の明治以降の近代日本画と岡山ゆかりの工芸品約50点を一堂に展示いたします。
「文明開化」の言葉が表すように、明治になると欧化政策のもと西洋文化が時代の主流になります。一方でフェノロサや岡倉天心による日本文化を再評価する動きも起こり、明治20年 (1887) に東京美術学校が創設されました。教授に迎えられた橋本雅邦 (1835~1908) は、作品に西洋画の色彩や遠近法を取り入れ、雅邦の指導を受けた菱田春草 (1874~1911) は線描を用いない新たな境地の技法を仲間と共に研究しました。月光を画中に余す事なく表現した「陸離」など日本画の可能性を模索します。また、上村松園 (1875~1949) ら女流画家が京都画壇で活躍し、女性の目線で気品あふれる格調高い女性像を描きました。本展では約10年ぶりに名作「良宵之図」を公開いたします。
工芸の分野では、明治9年 (1876) の廃刀令に伴い、岡山藩主お抱えの金工職人として活躍していた正阿弥勝義 (1832~1908) や、岡山に生まれ「明治正宗」と讃えられた刀工、逸見東洋 (1846~1920) らも職を失います。しかし、勝義は刀の小道具という小さな世界から自らを解き放ち、職人として培った技術の粋を尽くした「菊花・虫図皿」など金工作家としての作品を世に問い続けました。東洋は鏨 (たがね) を鑿 (のみ) や彫刻刀に持ち替え、木彫や彫漆作品に活路を見出し、それらの作品にあらわされた高い精神性や技量は現在でも高く評価されています。
明治から大正を生きた人々が、西洋文化流入と日本の近代化という変化の中から生み出した、現代へと通じる表現の息吹をご覧ください。