西村伊作(1884-1963)は、大正期を代表する文化人のひとりです。和歌山県新宮に生まれた伊作は、日本近代史において、いち早く本格的に生活のレベルでの欧米化を推進したモダニストでした。現在広く普及している「居間」を中心とする住宅建築の礎を築いたのも、建築家・伊作の重要な業績です。また、東京神田駿河台にも私費を投じて創設した文化学院は、教育者・伊作の自由な大正人としての建学の精神を現在も伝えています。絵筆を取り、ときには大胆な抽象画を描き、陶土をこね、庭を造り、料理にも精だし、多くの芸術仲間と語らい、家族教育、そして、性教育も含め、教育全般にもみずからの信じるところを臆することなく発表しました。その自由さは、戦前二度にわたり公権力からの弾圧を受けましたが、一生を通じて、その信念を貫き通した稀有の人物でした。本展では、建築、絵画、写真、デザイン、教育と、多分野にわたった伊作の姿を戦前までの活動を主に紹介いたします。油彩、水彩、デッサンなど絵画40点、写真(含む参考写真)50点、陶芸30点、建築・デザイン資料30点などを展示する予定です。