古来、日本人の信仰と密接な関わりあいがあった諸々の仏像の中でも、とりわけ慈悲と柔和な表情をたたえた観音菩薩像は、現世の幸せと来世の安らぎを求める人々に篤く歓迎され、その信仰を深めてきました。観音菩薩像には、じつに多種多彩な諸像があります。法華経の教えにもとづく基本形の聖観音像のほかに、千手、馬頭、十一面、楊柳、不空羂索、如意輪など、異形の姿をあらわす観音像もあります。
この企画展では、中国宋代の珍しい菩薩像をはじめ、半跏の姿をとる十一面観音像、堂々たる体躯の十一面観音像、さらには西国三十三所観音霊場のミニチュア観音像などに加えて、観音信仰の具体相を示す絵画、版画、拓本など、約60点の資料で展示を構成します。
古来、日本人がつちかってきた観音信仰に思いを寄せ、慈悲の面貌をたたえた観音像と向き合う時間をもたれるのも意義あることと思われます。
この機会にぜひ御清覧下さるよう、お待ち申し上げます。