20世紀のフランスを代表する画家、ジョルジュ・ルオー(1871年-1958年)の芸術は、敬虔なカトリック信者としての信仰に裏打ちされたものでした。重厚なマティエールで色彩が柔らかに光り輝いているルオーの絵画表現は、20世紀前半のパリ画壇の中でもひときわ個性的なものでした。それは、さまざまな様式や美術運動が沸き起こっていた画壇に追従せず、宗教的な倫理感を根底に社会的なテーマを追い求めたルオーの信念の結果だといえます。
このたびの展覧会は、出光美術館のルオーコレクションによって構成されているものです。出光美術館がルオーの作品をコレクションする契機となったのは、初代館長出光佐三氏と《受難(パッション)》と題する連作油彩画との運命的な出会いからでした。以来、現在までに400点以上に及ぶ内容を誇っています。本展は、初期水彩画から中後期にかけての油彩画に版画作品等を加えた100点を展覧し紹介します。また、出光美術館と関わりがあった哲学者の谷川徹三氏が旧蔵し、現在は尾道市立美術館が所蔵する《オアシス》(1950年頃)を、あわせて出品します。