原爆投下からすでに半世紀以上が経ち、ヒロシマの出来事は私たちの記憶から次第に遠ざかりつつあります。しかしながら、新しい世紀の始まりに私たちが目にしたのは、世界がいかに脆い平和の上に成り立っているかということでした。そして、ひとたび戦争が起これば人類を破滅に導く核兵器が使用されないという保証はありません。私たちは今なお核の脅威にさらされているのです。
1945年8月6日以降、「ヒロシマ」は人類に普遍のテーマとして、様々な芸術活動の中で語られてきました。現代美術もまた、時代を映す鏡として、ヒロシマの意味を問い続けています。本展は「ヒロシマをみる」と題し、独自の創造性でヒロシマと向き合う作品を展示し、美術がどのようにヒロシマの問題を深化させてきたかを振り返ります。また、今回は被爆の実態を伝える現物資料や被災写真などを合わせて紹介いたします。これらの資料と美術作品の間を実際に行き来しながら、ヒロシマに対する理解をよりいっそう深めて
いただくとともに、ヒロシマという現実と美術の関係について考える機会となれば幸いです。