ちひろが描く“花鳥風月”─日本的な美意識との接点
古来より日本人は繊細な感覚で、花鳥風月といった美しい自然を表現してきました。ちひろもまたみずみずしい感性で、四季折々の草花、小鳥や蝶、流れる雲や夜空の月といった、自然がみせる豊かな表情を作品に描いています。ちひろは晩年、世阿弥の能芸論書である「風姿花伝」を愛読するなど、日本の芸術思想にも深い関心を寄せるようになります。
本展では、子どもとともに四季の草花や自然の風物を描いた代表作、日本の物語や文学をテーマにした絵本『つるのおんがえし』(偕成社)、『たけくらべ』『赤い蝋燭と人魚』(以上、童心社)、『ひさの星』(岩崎書店)の原画のほか、水墨的な表現にも通じる『万葉のうた』(童心社)の原画と書の作品などを展示し、ちひろの絵に息づく日本的な美意識を探ります。